尿酸値について
尿酸値について
近年、食生活やライフスタイルの変化に伴い、尿酸値の高い人が増加傾向にあります。尿酸とは、細胞中にあるプリン体という物質が肝臓で分解されて生じる老廃物です。尿酸が血液中に溶ける量には限界があり、ある一定の尿酸値を超えると、溶け切らなくなった尿酸の結晶化が始まり、関節などに沈着します。尿酸値が高くなると高尿酸血症と診断され、放っておくと関節などに激痛を伴う痛風に進行します。
今回は尿酸値についてお話したいと思います。
◎尿酸値が高いと死亡率を高めるリスクも
尿酸値は健康診断で測定することができますが、この数値が高い状態を「高尿酸血症」と言います。生活習慣病のひとつである高尿酸血症は、現在、日本では潜在患者も含めて約500万人がかかっているといわれています。高尿酸血症は、はじめは自覚症状はありません。しかし、尿酸値の高い状態を数年間放置していると、ある日突然、足の親指が激しく痛み出すことがあります。これが「痛風」です。痛風の発作が起きても、尿酸値を下げるための治療をしなければ発作は繰り返され、痛みは慢性化します。足にコブができる方もいます。また、痛風と同様にいきなり激痛が起こる尿路結石にもなりやすくなります。
痛風を予防するためには、尿酸値が高いと指摘された時点から、早めに尿酸値を下げることが大切です。さらに怖いのが高血圧や糖尿病などの合併症を引き起こすリスクがあります。尿酸値が高いと生活習慣病になることが多く、心筋梗塞や脳梗塞の危険度も高いと考えられています。痛いだけでなく、死亡率の高い病気を引き起こす可能性がある非常に危険な状態といえます。
◎痛風の症状は?
尿酸の結晶ができやすい部分は手足で、特に足の関節が多いです。特徴的な症状は下記になります。
・激しい痛みがある
・赤く腫れている
・患部が熱を持つ
・足の親指の付け根、あるいは、ひざから下の部分が痛む
・一週間程度で痛みが全くなくなる
◎高尿酸血症になりやすい人の食生活
下記に当てはまるものがある人は痛風になるリスクがありますので注意が必要です。
・早食いや大食い
・天ぷらや揚げ物など脂っこいものが大好き
・外食やコンビニ食が多い
・間食をすることが多い
・野菜が苦手
・お酒が好きで毎晩飲む
尿酸値が高くなる原因は?
◎肥満
食べ過ぎや飲みすぎ、運動不足などによる肥満が原因であると言われています。痛風の方の約60%は肥満だそうです。肥満になると、中性脂肪が尿酸の産生を促すため、尿酸値が高くなります。
◎遺伝
痛風の方のおよそ20%は家族の遺伝によるものだそうです。
◎ストレスや運動
ストレスは尿酸値を上昇させます。また、激しい運動は一時的に尿酸値を上昇させます。
◎他の病気の影響
腎機能の低下や、血液の病気があると上昇します。悪性腫瘍があると高くなる場合があります。
◎薬の影響
高血圧や糖尿病などの薬の中には、尿酸値を上昇させるものがあります。
◎女性の場合、閉経
女性ホルモンが尿酸の排泄を促すため、閉経すると尿酸値が高くなります。
尿酸値を下げるために最も大切なこと
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◎食べ過ぎを防ぐ
尿酸値が高くなる原因の1つは食品に含まれるプリン体の取り過ぎです。プリン体を多く含む動物の内臓や魚の干物は食べ過ぎてはいけません。プリン体は体内でも作られ,肝臓で尿酸に変わり尿として排泄されます。肥満になると尿酸を作りやすく排泄しにくい状態になりますので,食べ過ぎをやめて適正な体重に戻すことが,プリン体の摂取制限よりも実は大切だと最近では考えられています。
尿量が増えれば尿と一緒に多くの尿酸を排泄できますので,水は1日2リットル以上飲むことが推奨されます※。尿をアルカリ性に近づける海藻や野菜は尿路結石の予防に有効です。
※他の疾患により既に生活指導を受けている方は医師にご相談ください。
◎お酒は適量に
「高尿酸血症でもプリン体の多いビール以外ならOK」などと考えていませんか?アルコール自体に尿酸値を上げる働きがありますので,それは間違いです。ウイスキーや焼酎などの蒸留酒はプリン体をほとんど含みませんが,アルコール度数が高いですし,何より太りやすい飲み物ですので適量に留めるべきです。
意外かもしれませんが,ベンチプレスなどの激しい運動(無酸素運動)は肥満解消法として勧められません。新陳代謝が活発となり,尿酸値が急上昇するからです。ウオーキングなどの軽い運動(有酸素運動)を定期的に行いましょう。ストレスは尿酸値を上げます。その解消にも運動は有効です。
◎プリン体制限よりもカロリー制限
痛風の人はプリン体を多く含む食品は食べてはいけないという話を聞いたことがある方も多いと思います。しかし、それはまちがいです。尿酸のもとになるプリン体は、8~9割が体内で作られ、食品から入る量は1~2割程度であるということがわかっています。しかも、多くが腸内で分解されて排泄されるようです。
つまり、プリン体を含む食品を絶対に食べてはいけない、というわけではないということです。プリン体は白子、あん肝、かつおなど、特にお酒好きの方がおいしいと感じる食品に多く含まれていますが、これらを制限しすぎる必要はないということです。
最近はプリン体の制限よりも肥満にならないようにカロリー制限をすることの方が推奨されています。基本的なことですが、1日3食、規則正しく食べる、野菜を多く食べる、腹八分目にするなどの心がけが必要になります。
さいごに
今回は、生活習慣病につながる尿酸値についてお話しました。激痛が走る前に、未然に予防することと、健康診断等で尿酸値が高いという診断結果が出たら放置せず、病院受診することが大切ですね。